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2019/01/10
しづちゃんのブログ

相手の気持ちを考える「人権作文」から

「相手の気持ちを考える」 

神戸市福田中学校 原 菜摘

私の母は介護士として老人ホームで働いています。昨年からホーム長としても働いているのでたくさんの仕事を任され、毎日がとても忙しそうです。そんな母の仕事が少しでも楽になればと思い、私は何度かボランティアとしてその老人ホームに行きました。

 

何度か老人ホームに行っているうちに、おじいちゃん、おばあちゃんへの虐待や差別といった人権問題があるということに対し、たくさんの疑問を持つようになりました。母の働く老人ホームは全員認知症の人たちです。そのうえ、体が不自由になった方も多くいらっしゃいました。例えば両手とも指が無いといった障害を持つ方、認知が進み「食べる」という動作すら分からなくなってしまった方。認知症は進めば進むほど出来ることも少なくなってきます。でも認知症の方自身では何ができていないのかも分からず、できない悲しさや悔しさを上手く表せないときもあります。私たちはできることも多く、悔しい、悲しいといった感情を上手く表すことができます。こういったことが高齢者への虐待などの行動の原因の一つといえるのではないでしょうか。

 

みんな同じ人間なのに年をとったことによって虐待を受け、心や体を傷つけられた人がこの世の中にたくさんいらっしゃいます。最悪の場合は亡くなったというニュースをテレビで見たこともあります。できることがたくさんある私たちにとっては、「どうしてできないの」と感じることでしょう。実際に私が「これをしてくれる?」と言っても、何度教えてもできず、正直私もどうしてできないのかと思いましたが、認知症だということを理解したうえで接していたので、いら立ちはありませんでした。もちろん私は、毎日母のように認知症の方と接しているわけではありません。毎日接していれば少しのいら立ちはあるかもしれませんが、そこで自分の感情をコントロールし、相手の気持ちを考えることができれば、虐待という一つの大きな問題が起こらずに済むのではないでしょうか。認知症になって、何が何なのかを分からなくなってしまっても、「痛い」のは誰でも一緒です。自分の感情ばかり押しつけていても何の解決にもなりません。

 

また、日々医学も進歩している中で、認知や他の病気の影響で暴言をはく人、暴れて暴力をふるう人を薬で押さえつけ、おとなしくさせることがあると母から聞きました。薬が効きすぎて前とは別人のようになる人も多くいるそうです。また、何も話さずただただ1点をぼーっと見つめているだけの状態になる人もいるそうです。それを初めて聞いたとき、とても驚いたことを覚えています。そして、同時に薬で抑えることにも疑問を持ちました。人にとって、メリットとデメリットになる薬。どんなに長く生きられても、自分を尊重するものが何もなくなるのはおかしいと思います。みんなが長生きできることはとてもすばらしいことです。でも私は「幸せに」生きなければ生きる意味はないと思います。辛くても、その先に幸せがあるのなら、薬を飲む意味はあると感じました。だから、暴れる人を押さえつけるのではなく暴れない程度に生活できるように薬を調整できればいいなと思いました。

 

これからの未来はどうなっていくのでしょうか。もちろん誰にも分からないけれど、高齢者への虐待や差別といった人権問題を無くしていきたいです。そのうえで大切なことは、「自分だけではなく、相手の気持ちを考えてお互いに尊重しあって生きていくことだと思います。相手の病気や気持ちを理解して接することを日々、心がけていきたいです。

(原文のまま)

 

*この作文はまんてん堂グループホームで働く職員の娘さんが中学1年生の時の国語で「人権作文を書く」いう授業があった際に書かれたものです。娘さんは学校がお休みの日にお話しボランティアやコーラスボランティア、夏祭りお手伝い等で度々施設を訪問してくださっていました。娘さんは普段からニュースで見聞きする「高齢者虐待」に胸を痛めておられたそうで、自分の関わりの中で疑問に思ったことやお母様から聞いている話の中で驚いた事などを素直に書き綴られたそうです。

この作文は神戸市人権教育研究協議会の「手を繋げば大丈夫」文集に掲載されています。

 

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